TCFD提言に基づく情報開示 2024年度版
〈 TCFD提言への対応 〉
日本テレビホールディングスは、SDGs(持続可能な開発目標)の精神に共感し、環境問題、人権問題等われわれを取り巻く社会課題の解決に向けて、グループを挙げて取り組むための方針「サステナビリティポリシー」を策定しました。
そのうちの重要課題の1つとして「地球環境への貢献」を掲げており、当社グループは、TCFD提言に基づき継続的な開示を行うことは重要な責務であると考えています。地球環境に貢献するため、信頼されるメディアであり続けるため、当社グループは一丸となって脱炭素化に取り組みます。

- 気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)の略称。企業等に対し、気候変動関連リスクと機会に関して「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の開示を推奨している。
ガバナンス
サステナビリティへの対応は、「サステナビリティ委員会」(以下、「サステナ委」)が司令塔の役割を担います。福田博之代表取締役社長執行役員が委員長を務め、日本テレビホールディングスの執行役員が委員に就いています。
サステナ委のもとには、実務組織としてのサステナビリティ事務局及び、グループ各社の事業部門の責任者らによる3つのワーキング(「気候変動対策」、「人権」、「人的資本」)が設置されていて、サステナビリティに関する課題への対応策を検討し、サステナ委に提言を行います。
サステナ委は年に2回開催され、ワーキングからの提言を受けて、グループ全体の方針や目標、ロードマップを決定します。取締役会はサステナ委から重要事項や活動状況について報告を受け、対応方針や実行計画を監督します。

サステナビリティ関連の各組織体の役割
上席執行役員4名
執行役員6名・局長2名
サステナビリティ事務局長
総務・人事管理局長代理
経営管理局法務部長
総務・人事管理局人事部長
戦略
シナリオ分析の概要
気候変動や温暖化対策などの政策動向による事業環境の変化を想定し、TCFD提言が推奨する複数の気候シナリオでの分析として、下記のグループ16社において、1.5℃シナリオと4℃シナリオで想定されるリスクと機会を検討しました。
メディア・コンテンツ事業 14社
- 日本テレビ放送網株式会社
- 株式会社BS日本
- 株式会社CS日本
- 株式会社日テレ アックスオン
- 株式会社日テレ・テクニカル・リソーシズ
(以下 NiTRo) - 株式会社日テレイベンツ
- 株式会社日本テレビアート
- 株式会社日本テレビサービス
- 株式会社日テレWands
- 株式会社ムラヤマ
- HJホールディングス株式会社
- 株式会社PLAY
- 株式会社ライツ・イン
- 株式会社ClaN Entertainment
生活健康関連事業 2社
- 株式会社日テレリアルエステート
- 株式会社ティップネス
1850~1900年を基準とした
世界平均気温の変化

1.5℃シナリオ
GHG排出量の削減に向けた厳しい規制措置が取られ、今世紀末の時点で、世界の平均気温の上昇が産業革命前と比べて1.5℃以内に収まる想定。低炭素社会が急速に進展し、法規制や社会的要請への対応を迫られるシナリオ。
- IPCC(気候変動に関する政府間パネル)のSSP1-1.9シナリオ、IEA(国際エネルギー機関)のNZE2050シナリオを参照
4℃シナリオ
温暖化対策が徹底されず、今世紀末の時点で、世界の平均気温が産業革命前と比べて4℃程度上昇する想定。異常気象の増加や自然災害の激甚化など気候変動の物理的影響が顕著となるシナリオ。
- IPCCのSSP5-8.5シナリオ、IEAのSTEPSシナリオを参照
主要なリスクと機会及び影響度
メディア・コンテンツ事業
◎:事業への影響が大きい
○:事業への影響がやや大きい
△:事業への影響は軽微
リスク・ 機会分類 | リスク・ 機会項目 | 重要度 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
1.5℃ シナリオ | 4℃ シナリオ | |||||
2030 | 2050 | |||||
移行リスク | 法規制 | 温室効果ガス規制強化 | 再生可能エネルギー価格の上昇、炭素税や排出権取引等によるエネルギーコスト増加 | ◎ | ◎ | ◎ |
技術 | 設備投資の増加 | 電力消費量削減のための設備投資コスト増加 | ○ | ○ | ○ | |
市場 | 平均気温上昇 | CO2削減や脱炭素対応のための価格転嫁が進むことに伴う、番組・イベント・商品制作 等のコスト増加 | ○ | ◎ | ◎ | |
夏季の取材・撮影・イベント開催等に制約 | ○ | ○ | ◎ | |||
在宅時間の増加 (夏季の外出時間が減少)による集客等への悪影響 | △ | △ | ○ | |||
評判 | 評判 | CO2削減に向けた取り組みが遅れることによるクライアント・ステークホルダーからの評判の悪化、広告出稿及び受発注停止等のリスク | ○ | ○ | ○ | |
番組・イベント等で環境問題の発信を行っているにも関わらず、自社でのCO2削減取り組みが遅れることで、視聴者・顧客からのネガティブな反応を招くリスク | ○ | ○ | ○ | |||
物理的リスク | 急性 | 気象災害の増加・激甚化 | 従業員の被災リスク上昇、災害報道の困難化 | ○ | ○ | ○ |
天候に由来する番組・イベント等のキャンセルリスク | ○ | ○ | ◎ | |||
慢性 | 海水面の上昇 | 高潮による社屋・施設の浸水リスク | ○ | △ | ○ | |
健康リスク・対応 | 従業員の熱中症の頻発、夏季の屋外就業制限等による生産性の悪化 | ○ | ○ | ○ | ||
従業員の安全な労働環境のための設備投資コスト増加 | ○ | ○ | ○ | |||
機会 | 資源効率性 | 従業員の意識向上 | 従業員の環境意識が向上し、CO2削減アクションが積極的に進むことによるエネルギーコストの低下 | △ | ○ | ○ |
就業スタイルの変化 | DX化の進展・リモートワークのさらなる活用など、従業員の働き方の変化によって事業所面積の縮小が可能に | △ | △ | ○ | ||
製品/ サービス | 視聴者・消費者の嗜好やスポンサーニーズが変化 | 災害報道や「Good For the Planet」など、地球温暖化やサステナビリティ 関連コンテンツの需要・評価が高まる | ○ | ○ | ○ | |
気候変動問題への認識を共有するスポンサー企業と連携したキャンペーン・イベント等の実現 | ○ | ○ | ○ | |||
環境に配慮した新商品開発等、ニーズへの適合によるブランドイメージ向上・競争力の強化 | ○ | ○ | ○ | |||
在宅時間の増加 (夏季の外出時間が減少)による映像コンテンツの需要増 | ○ | ○ | ◎ |
生活・健康関連事業
◎:事業への影響が大きい
○:事業への影響がやや大きい
△:事業への影響は軽微
リスク・ 機会分類 | リスク・ 機会項目 | 重要度 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
1.5℃ シナリオ | 4℃ シナリオ | |||||
2030 | 2050 | |||||
移行リスク | 法規制 | 温室効果ガス規制強化 | 再生可能エネルギー価格の上昇、炭素税や排出権取引等によるエネルギーコスト増加 | ○ | ○ | ◎ |
技術 | 設備投資の増加 | 電力消費量削減のための設備投資コスト増加 | ○ | ○ | ◎ | |
使用素材の転換 | 清掃・メンテナンス等の使用素材を低炭素素材に転換することに伴うコスト増加 | ○ | ○ | ◎ | ||
市場 | 平均気温上昇 | CO2削減や脱炭素対応のための価格転嫁が進むことに伴う、サービス価格の値上げ・競争力低下リスク | △ | △ | ○ | |
在宅時間の増加 (夏季の外出時間が減少)による集客等への悪影響 | ○ | ◎ | ◎ | |||
評判 | 評判 | CO2削減に向けた取り組みが遅れることによる、ステークホルダーや顧客からのネガティブな反応を招くリスク | △ | △ | △ | |
物理的リスク | 急性 | 気象災害の増加・激甚化 | 従業員・施設の被災リスク上昇 | ○ | ○ | ◎ |
天候に由来する集客や太陽光発電事業等への悪影響 | ○ | ◎ | ◎ | |||
慢性 | 海水面の上昇 | 高潮による社屋・施設の浸水リスク | △ | △ | ○ | |
健康リスク・対応 | 従業員の熱中症の頻発、夏季の屋外就業制限等による生産性の悪化 | △ | △ | ○ | ||
従業員の安全な労働環境のための設備投資コスト増加 | △ | △ | ○ | |||
機会 | 資源効率性 | 従業員の意識向上 | 従業員の環境意識が向上し、CO2削減アクションが積極的に進むことによるエネルギーコストの低下 | △ | △ | △ |
製品/サービス | ライフスタイルの変化 | 健康や体調管理に対する意識が向上し、フィットネス事業への関心が高まる | ○ | ○ | ○ | |
在宅時間の増加 (夏季の外出時間の減少)によるオンラインフィットネスの需要増 | ○ | ○ | ○ |
リスク・機会に対する
当社グループの対応
- 温室効果ガス規制強化
- ■電力に占める再生可能エネルギーの比率を高める
・日本テレビ放送網:2030年度までに再生可能エネルギー比率100%を計画
・日テレイベンツ:全電力をグリーン電力化
■省エネ機器の利用拡大により消費電力を削減
・日本テレビ放送網:2031年までに全ての照明をLED化する計画
生田スタジオの屋上に太陽光パネルを設置して自社内で発電を行う
・ティップネス:フィットネスクラブの全店舗でLED化100%と
シャワーへの節水バルブ装着に伴う省資源化を行う - 使用素材の転換
- ■ペーパーレス化の推進
・日本テレビ放送網:社内書類・契約書の電子化、スケッチブックに書いていた番組出演者への指示(カンペ)の電子化等、ペーパーレス化を推進
■美術セット素材の転換
・日本テレビアート:テレビ番組等の美術セットについて、従来から使用している南洋材(ラワン材)に代えて環境負荷の少ない資材で試作品の製作や試運用を実施 - 評判
- ■環境関連情報の積極的な開示
・メディア・コンテンツ事業:GHG排出量の算定・開示をグループ全体に拡大
ステークホルダーからのGHG排出量問い合わせ等に対して、迅速に対応
■コンテンツを通じた発信
・日本テレビ放送網:「Good For the Planet」「所さんの目がテン!」「ザ!鉄腕!DASH!!」等の番組・キャンペーンを通じ、気候変動や環境問題についての主体的な発信を行う
■ステークホルダーとの連携
・日本テレビ放送網:日本列島ブルーカーボンプロジェクトでは、番組趣旨に賛同するパートナー企業とともに、海洋環境の保全を学ぶ旅番組「ウミコイ-今 海に出来ること-」等の情報発信を行う。東京湾に藻場を再生・造成するプロジェクトを推進するため、三浦半島の5市町(横須賀市/三浦市/鎌倉市/逗子市/葉山町)と包括連携協定を締結。 - 物理的リスク
- ■放送継続のための体制構築
・日本テレビ放送網:大阪を拠点とする読売テレビと連携し、高潮等で汐留本社が被災した場合でも、読売テレビのシステムを利用して放送継続する体制を構築
■DX化推進とリモートワークの拡大
・グループ全体:社内システムDX化やリモートワーク制度を積極的に推進

(環境負荷の少ない資材を使用)電子カンペ

リスク管理
代表取締役社長執行役員を委員長とするサステナビリティ委員会では、サステナビリティ事務局及び各ワーキングからの報告をもとに、サステナビリティに関する当社グループに係るリスクと機会を時間軸・財務的インパクトを考慮して識別し、経営への影響を適切に評価します。また、重大なリスクと評価した事項については取締役会に速やかに報告し、さらに必要な場合は、危機管理委員会とも情報共有・連携を行い、リスクの最小化に向けて対応策を決定します。
関連部門及びグループ各社は、識別されたリスクと機会を認識し、年度ごとに更新されるサステナビリティポリシーアクションプラン等に適宜反映・見直すこと等を通じて当該リスクと機会を管理します。
指標と目標
目標
- 1
日本テレビホールディングスは、GHG排出量(Scope1+Scope2)を開示するグループ会社を現在の16社から更に拡大します。
日本テレビ放送網と日本テレビサービスでは、Scope3の算出をしていきます。 - 2
日本テレビ放送網は、2030年度までに電力の再生可能エネルギー比率を100%とします。
さらに、GHG排出量(Scope1+Scope2)を2019年度比で50%削減します。 - 3
日本テレビホールディングスは、2050年度までにカーボンニュートラルを実現します。
- Scope1(事業による直接排出)
- Scope2(電力・熱・蒸気の購入による間接排出)
- Scope3(Scope2以外の間接排出(自社事業の活動に関連する他社の排出)
日本テレビホールディングス
2024年度
グループ16社のGHG排出量
(Scope1+Scope2)
合計値:40341.42 tCO2e

日本テレビ放送網 GHG排出量推移

日本テレビ放送網 2024年度GHG排出原単位(Scope1・2・3)
- 算定結果1
放送事業関連に係る
GHG排出係数0.20 tCO2e/百万円
- 算定結果2
放送事業関連に係る
GHG排出係数21.89 kgCO2e/15秒
- ①百万円相当の売上に伴い発生するCO₂相当量
- ②放送15秒に伴い発生するCO₂相当量