TCFD提言に基づく情報開示

2023年度版

  • うみスケ
  • にじモ
  • そらジロー
  • くもジロー
  • ぽつリン
  • ゆきポ

TCFD提言への対応

日本テレビホールディングスは、SDGs(持続可能な開発目標)の精神に共感し、環境問題、人権問題等われわれを取り巻く社会課題の解決に向けて、「持続可能な未来への貢献」を経営方針の1つとしています。「24時間テレビ」「Good For the Planet」をはじめとした放送での発信を通じて、われわれの価値観を多くの人々と共有しながら、社会的責任を果たします。

  • 24時間テレビ
  • Good For the Planet グップラ

当社のサステナビリティポリシーは重要課題の1つとして「地球環境への貢献」を掲げており、当社はTCFD提言に基づき継続的な開示を行うことは重要な責務であると考えています。

2024年は「戦略」や「指標と目標」などの開示範囲を日本テレビ放送網以外のグループ各社にも拡大しました。地球環境に貢献するため、信頼されるメディアであり続けるため、当社グループは一丸となって脱炭素化に取り組みます。

  • TCFD
  • 気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)の略称。企業等に対し、気候変動関連リスクと機会に関して「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の開示を推奨している。 

ガバナンス

サステナビリティへの対応を加速させるため、「サステナビリティ委員会」(以下、「サステナ委」)が司令塔の役割を担います。石澤顕代表取締役社長執行役員が委員長を務め、日本テレビホールディングスの執行役員が委員に就いています。

サステナ委のもとには、グループ各社の事業部門の責任者らによる3つのワーキング(「気候変動対策」、「人権」、「人的資本」)が設置されていて、サステナビリティに関する課題への対応策を検討し、サステナ委に提言を行います。

サステナ委は年に2回開催され、ワーキングからの提言を受けて、グループ全体の方針や目標、ロードマップを決定します。取締役会はサステナ委から重要事項や活動状況について報告を受け、対応方針や実行計画を監督します。

戦略

シナリオ分析の概要

気候変動や温暖化対策などの政策動向による事業環境の変化を想定し、当社の事業や経営に与える影響を検討しました。

TCFD提言が推奨する複数の気候シナリオでの分析として、主要事業の放送事業を行う日本テレビ放送網に加え、日テレ アックスオン、 日テレ・テクニカル・リソーシズ(以下、「NiTRo」)、日本テレビアート、日テレイベンツ、日本テレビサービス、ティップネスのグループ7社を対象に、1.5℃シナリオと4℃シナリオで影響を評価しました。

1850~1900年を基準とした世界平均気温の変化

IPCC第6次評価報告書 1作業部会報告書より
1.5℃シナリオ
温室効果ガス排出量の削減に向けた厳しい規制措置が取られ、今世紀末の時点で、世界の平均気温の上昇が産業革命前と比べて1.5℃以内に収まる想定。低炭素社会が急速に進展し、法規制や社会的要請への対応を迫られるシナリオ。 IPCC(気候変動に関する政府間パネル)のSSP1-1.9シナリオ、IEA(国際エネルギー機関)のNZE2050シナリオを参照
4℃シナリオ
温暖化対策が徹底されず、今世紀末の時点で、世界の平均気温が産業革命前と比べて4℃程度上昇する想定。異常気象の増加や自然災害の激甚化など気候変動の物理的影響が顕著となるシナリオ。 IPCCのSSP5-8.5シナリオ、IEAのSTEPSシナリオを参照

それぞれのシナリオにおいて、想定されるリスクと機会を検討しました。

主なリスクと機会

1.5℃シナリオ (=低炭素社会が急速に進展)

  • ◎:影響が大きい
  • ○:影響あり
  • △:やや影響
  • 短期:3年以内、中期:2030年ごろ、長期:2050年ごろ
メディア・コンテンツ事業

(日本テレビ放送網、日テレ アックスオン、NiTRo、日本テレビアート、日テレイベンツ、日本テレビサービス)

項 目 想定されるシナリオ リスク 機会 発生時期
温室効果ガス
規制強化
再生可能エネルギー価格の上昇、炭素税や排出権取引などによる事業コスト増加 短・中期
規制強化や炭素税などコスト増加による価格転嫁
(番組等の制作コストの増加)
短・中期
設備投資の増加 規制強化による設備の省電力化でコスト増加 短・中期
評判 CO2削減に向けた取り組みが遅れ、企業イメージが悪化 短・中期
災害報道、温暖化対策キャンペーンの展開によるブランドイメージの向上 短・中期
視聴者の嗜好や
スポンサー
ニーズが変化
「24時間テレビ」「Good For the Planet」「カラダWEEK」キャンペーンなど、地球温暖化やサステナビリティ関連コンテンツの需要が一層高まる
スポンサー企業とコラボした環境啓発番組・イベントの増加
短・中期
ライフスタイル
の変化
DX化の進展・リモートワークのさらなる活用など、従業員の働き方の変化によって事業所面積の縮小が可能に 短・中・長期
生活・健康関連事業

(ティップネス、日本テレビサービスの一部事業)

項 目 想定されるシナリオ リスク 機会 発生時期
温室効果ガス
規制強化
再生可能エネルギー価格の上昇、炭素税や排出権取引などによる事業コスト増加 短・中期
規制強化や炭素税などコスト増加による価格転嫁 短・中期
設備投資の増加 規制強化による設備の省電力化でコスト増加 短・中期
評判 CO2削減に向けた取り組みが遅れ、企業イメージが悪化 短・中期
CO2削減に向けた取り組みが進展し、企業イメージがアップ 短・中期
ライフスタイル
の変化
健康や体調管理に対する意識が向上し、フィットネス事業の需要が高まる 中・長期

1.5℃シナリオでは、温室効果ガスの削減に向けて企業はより厳格な対応を迫られ、炭素税導入や再生可能エネルギーの需要増加によるコストの上昇が見込まれます。政府により規制が強化されれば、設備投資の増加は避けられません。さらに、CO2削減の取り組みの遅れは企業イメージの悪化に直結します。

一方、気候変動に関する社会の関心が高まり、正確な情報を発信するというメディアの役割はますます重要になります。役割が不十分だと判断されれば、視聴者やスポンサーからの信頼が低下することは避けられません。また、番組制作においては、サステナビリティ、カーボンニュートラル実現に向けたコンテンツの需要が高まることが予想されます。メディア・コンテンツ事業を軸とする当社グループとしては、自社のCO2削減を進めることはもとより、気候変動の一層の深刻化を食い止めるため、社会に訴えかけていくことも大きな責務であると認識しています。

生活・健康関連事業においても、CO2削減に向けた規制強化の影響、エネルギー調達コストの増加が事業リスクとして予想されます。操業コスト増加による価格転嫁を抑えつつ、DX化の進展やリモートワークの拡大など、ライフスタイルの変化や健康意識の高まりをとらえる施策が必要になると考えています。


4℃シナリオ (=地球温暖化が深刻に)

  • ◎:影響が大きい
  • ○:影響あり
  • △:やや影響
  • 短期:3年以内、中期:2030年ごろ、長期:2050年ごろ
メディア・コンテンツ事業

(日本テレビ放送網、日テレ アックスオン、NiTRo、日本テレビアート、日テレイベンツ、日本テレビサービス)

項 目 想定されるシナリオ リスク 機会 発生時期
平均気温上昇 機材の強靱化に向けた設備投資のコストが増加
メンテナンスコストが増加
中・長期
夏季の取材・撮影に制約   中・長期
気象情報や生活情報に視聴者の関心が高まる 中・長期
空調コスト等が増加   中・長期
在宅時間の増加(夏季の外出時間が減少)
イベントの開催や集客等に悪影響
  中・長期
在宅時間の増加(夏季の外出時間が減少)
映像コンテンツの需要が高まる・テレビ通販部門の収益拡大
中・長期
気象災害の
増加・激甚化
(台風・洪水・干ばつなど)
防災情報・災害報道のニーズが高まる 中・長期
従業員の被災リスク上昇、災害報道の困難化 中・長期
海水面の上昇 高潮による汐留本社の浸水リスクが高まる 中・長期
健康リスクが
増大
健康番組・キャンペーンへの関心が高まる   中・長期
従業員に熱中症の頻発や新たな感染症の発生の恐れ 中・長期
生活・健康関連事業

(ティップネス、日本テレビサービスの一部事業)

項 目 想定されるシナリオ リスク 機会 発生時期
平均気温上昇 機材の強靱化に向けた設備投資のコストが増加
メンテナンスコストが増加
中・長期
空調コスト等が増加   中・長期
在宅時間の増加(夏季の外出時間の減少)
オンラインフィットネスの需要増
中・長期
気象災害の
増加・激甚化
(台風・洪水・干ばつなど)
従業員・施設の被災リスク上昇 中・長期
海水面の上昇 高潮による施設の浸水リスクが高まる 中・長期
健康リスクが
増大
健康関連のキャンペーンへの関心が高まる   中・長期
従業員に熱中症の頻発や新たな感染症の発生の恐れ 中・長期

4℃シナリオでは、異常気象が慢性化し、台風や豪雨による水害の激甚化、干ばつ被害の増加などが予想されます。気温上昇は熱中症患者の増加をもたらし、新たな感染症を発生させる恐れもあります。

当社は公共性を有する放送を担っており、防災や災害に関する報道機関の役割が一層求められることになります。一方で、高温下での屋外撮影によって、番組制作が制約を受ける恐れが生じるほか、放送機材に不具合が発生するリスクが高まります。放送を継続して報道機関としての責務を果たすためには、従業員の被災リスクを低減しつつ、放送機材の強靱化を進めていく必要があります。

平均気温の上昇により、社会活動全体が制約を受け変容を迫られることも予想されます。そうした変化に対応し、新たなビジネス、新たな需要を生み出せるかも問われることになります。

リスク・機会に対する当社グループの対応

1.5℃シナリオ

再生可能エネルギーの積極的な活用
グループ各社は、電力に占める再生可能エネルギーの比率を高める努力を続けています。日テレイベンツは全電力をグリーン電力でまかなっています。
省エネの一層の推進
日本テレビ番町スタジオは2019年の竣工時に照明のすべてをLED化しました。
汐留本社は2031年までにすべての照明をLED化することを計画しています。
ティップネスは2020年3月までにフィットネスクラブの全店舗でLED化100%を達成しています。
環境関連情報の継続的な開示
対外的な発信を続けることで、メディアとしての責務を果たします。
気候変動対策ワーキングを通じて、グループの取り組みを定期的に見直します。

4℃シナリオ

防災情報や災害報道の強化
“いのちを守る”報道を続け、災害時に信頼される「情報源」となります。
放送継続のための体制構築
大阪を拠点とする読売テレビとの協力強化を進めており、高潮によって汐留本社が被災した場合でも、読売テレビのシステムを利用して放送を継続します。

このほか、グループ各社では自然環境に配慮した取り組みも行っており、今後も継続・推進していきます。

  • 日本テレビアート

テレビ番組等の美術セットについて、従来から使用している南洋材(ラワン材)に代えて環境負荷の少ない資材で試作品の製作や試運用を行っています。

Elephant at sunset
番組セット(環境負荷の少ない資材を使用)
  • 日本テレビ放送網
  • 日本テレビアート
  • NiTRo

2023年(NiTRoについては2023年度)のコピー用紙の削減量は、日本テレビ放送網が約79%(2017年比)、日本テレビアートは約57%(2019年比)、NiTRoは約44%(2019年度比)となりました。

社内書類や契約書の電子化に加えて、日本テレビ放送網の番組では、スケッチブックに書いていた出演者への指示(カンペ)を電子化するなど積極的なペーパーレス化を進めています。

Elephant at sunset
電子カンペ
Elephant at sunset
電子カンペ
  • ティップネス

2022年3月までにすべての店舗でシャワーに節水バルブを装着し、省資源化に努めています。

Elephant at sunset
シャワー本体及びホースに接続して使用(※店舗により形状は異なります)
通常利用時よりも約20〜30%の節水効果

リスク管理

リスクの特定・評価
サステナビリティ委員会(サステナ委)が、気候変動対策ワーキングや関係部局の報告をもとに、気候関連のリスクを特定します。サステナ委は、リスクが発生する可能性や時期、経営への影響を適切に評価します。
リスクへの対応
サステナ委は重大なリスクと評価した事項を取締役会に速やかに報告します。必要な場合は、危機管理委員会や災害対策委員会と情報共有・連携し、リスクの最小化に向けて対応策を決定します。

指標と目標

目標

  1. 日本テレビ放送網は2030年度までに電力の再生可能エネルギー比率を100%とします。
    CO2排出量(Scope1※1+Scope2※2)を2030年度までに2019年度比で50%削減します。
  2. 2024年度は日本テレビ放送網がScope3※3の算出に着手するとともに、CO2排出量(Scope1+Scope2)を開示するグループ会社を、7社からさらに拡大します。
  3. 2050年度までに日本テレビグループでのカーボンニュートラルを実現します。
  • ※1 Scope1:事業による直接排出
  • ※2 Scope2:電力・熱・蒸気の購入による間接排出
  • ※3 Scope3:Scope2以外の間接排出(自社事業の活動に関連する他社の排出)

CO2の排出量

日本テレビ放送網の3拠点(汐留・番町・生田)
CO2排出量(2023年度実績)

  • Scope1:3956.2 t-CO2
  • Scope2:18811.5 t-CO2
  • t-CO2:二酸化炭素1トンを意味する単位
  • 2023年度よりScope2の算出の一部で調整後排出係数を使用しています。

グループ7社のCO2排出量
(Scope1+Scope2 / 2023年度実績)

  • 日本テレビ放送網:22767.7 t-CO2
  • ティップネス:43083.6 t-CO2
  • ほか5社合計:747.1 t-CO2
  • 日テレ アックスオン: 295.2 t-CO2
  • NiTRo:386.0 t-CO2
  • 日本テレビアート:29.5 t-CO2
  • 日テレイベンツ:0 t-CO2
  • 日本テレビサービス:36.4 t-CO2
  • 使用するエネルギーがグリーン電力のみのため、0 t-CO2としています

温室効果ガス削減に向けた取り組み

再生可能エネルギーの利用促進とCO2排出量の開示拡大
当社は「サステナビリティポリシー」(2021年11月策定)において、日本テレビ放送網におけるすべての電力の再生可能エネルギー比率を2030年度までに100%とすることを表明しています。
これを実現するために、再生可能エネルギーの調達に加えて、生田スタジオの屋上に太陽光パネルを設置するなど自社内での発電にも力を入れていきます。
2050年の日本テレビグループ全体でのカーボンニュートラル実現に向けて、CO2排出量等を開示する範囲を他のグループ会社にも拡大するとともに、今後も年度ごとに排出量を当社HPにて開示します。
省エネ機器の利用拡大により消費電力を削減
2031年までに汐留本社の照明はすべてLED化することを計画しています。空調機やポンプ類などを資源効率性の高い機器に更新することで、消費電力自体を削減します。
日本列島ブルーカーボンプロジェクト
日本テレビが開局70年を迎えた2023年、「海の森を守ろう!日本列島ブルーカーボンプロジェクト」をスタートさせました。生長する際にCO2を吸収固定するアマモや海藻を育てる取り組みで、グループ各社の社員やその家族らがアマモ場を再生させる活動を定期的に行っています。
日本テレビはブルーカーボンの可能性に着目し、「news every.」「真相報道バンキシャ!」などで特集を放送しました。2023年10月からは海洋環境の保全を学ぶ旅番組「ウミコイ-今 海に出来ること-」を放送しています。「ウミコイ」を制作する過程では、取材ロケの効率化・最小化とハイブリッドカーでの移動などにより、通常の番組に比べてCO2排出量を約63%削減しました。番組の趣旨に賛同したパートナー企業とともに情報発信しているほか、東京湾にアマモ場を造成するプロジェクトを推進するため、2023年10月に三浦半島の5市町(横須賀市/三浦市/鎌倉市/逗子市/葉山町)と包括連携協定を結びました。
  • Earth hacks株式会社による集計(2024年3月末現在)
Elephant at sunset
アマモ場再生・花枝採取イベント
Elephant at sunset
ボランティア参加者集合写真