ニュース・活動報告News & Activity report

コンテンツ業界と女性の“今” ー国際女性デー座談会 前編ー

【写真左より:直原・枝見・谷生・白川】

日本テレビグループ社員が語る座談会企画。第1弾の「LGBTQ」に続き、第2弾は「女性」をテーマに、コンテンツ業界のリアルな“今”をお届けします

直原 
サステナビリティサイトの対談企画第2弾としまして、3月8日の国際女性デーを軸に、前半では「コンテンツ業界と女性の“今”」というテーマでお話していきたいと思います。まずは、今回新たに座談会メンバーに加わった枝見さんの自己紹介からお願いいたします。

枝見
枝見と申します。2008年に株式会社日テレアックスオンに入社しました。入社後しばらくは日本テレビの映画事業部でプロデューサーのお手伝いをしながら企画を出したりしていましたが、2012年公開の「桐島、部活やめるってよ」の実現がきっかけで、その後プロデューサーとして色々な作品に関わらせて頂けるようになりました。
今は映画だけではなくドラマにも携わるようになりまして、「ゆとりですがなにか」「奥様は、取り扱い注意」「恋はDeepに」など、個性豊かな素晴らしいクリエイターの方たちとお仕事をさせて頂いています。

2019年に出産をして、いま2歳の子どもの育児をしながら現場に立っています。本当に周りの色々な方に助けられているので、自分の経験を後輩たちにもつないでいきたいなという思いがすごくあります。よろしくお願いいたします!

谷生
経歴が華やか! どれも素敵な作品ばかりですね。

白川
今回の座談会のきっかけである「国際女性デー」についてご紹介したいんですが、もともとは欧米の女性たちによる労働運動や参政権を求める社会運動にルーツがあって、1975年に国連が記念日として制定したものなんですよね。今は、女性のエンパワーメントやジェンダー平等についてのいろいろな取り組みが世界中で行われる日になっています。

僕の所属する日本テレビ報道局では今月、国際女性デーに合わせて「#自分のカラダだから」というタグを作り、女性の体と健康に関して考える企画を様々な番組で展開しています。同じハッシュタグをNHKさんや他の民放各社さんでも掲げて、みんなでこのテーマについて考える機会になればと思っています。
 


直原
皆さんそれぞれドラマ・映画・報道とコンテンツ業界の制作現場でご活躍されていますが、女性を取り巻くコンテンツ業界の今の環境について、率直にいかがでしょうか?

枝見
私が働き始めてからの十数年の間に環境が良くなってきているなというのは、一番最初に思うことです。以前は、今だったらコンプライアンス違反になるようなことを言われて「この気持ちをどこへ吐き出したらいいんだろう?」と思ったりしていたんですけど、今は本当にみんなの意識が変わりました。

ただ、環境が良くなってきてはいますが、女性はまだまだ「何歳までこの仕事を続けられるだろう?結婚・出産を経ても今の仕事を続けられるのか?」と考えることが多いと思います。制作現場の過密なスケジュールなどの事情もあって、そういう考えを持つこと自体が自分自身の弱さなのか、それともその現場環境の問題なのかということが分からずにモヤモヤするという経験を持つ人もいると思います。

白川
ご自身や周囲で「こんな課題がなかなか解決できない」というようなことはありますか?

枝見
女性って、なぜか「選択」をしなきゃいけない流れになっていると思うんです。女性が社会で働き続ける“女性活躍推進”的な世の中の動きと、少子化対策で子どもを大事にしたり、子どもの数を増やしたいという動きは同時に起きていますよね。両立というのを言葉で言うのは簡単だけど、実際に働いている現場から見るとやっぱり難しい部分があります。

20代のまだキャリアも築けていない世代が、今のチャンスを逃したくないと考えて仕事に打ち込むのは、男女問わず自然なことだと思います。そうやって晩婚化が進んで子どもを持つ年齢が遅くなるのは当然の流れなのに、なぜか女性だけの責任のような、女性が結婚・出産を「選択」しなかったからということになりがちだなぁと。

白川
少子化・晩婚化が急に「女性だけの選択の結果」みたいにされているけれども、そんなことないですよね。

谷生
未だにやっぱり、国を動かしている人たちが「子どもを産む『機能』は女性しか持っていない、ゆえに女性が主体的に作るしかない」という捉え方のまま、社会システムを作っている感じがしますよね。

そういうことじゃなくて、社会全体でどうやって子どもを大事にするか、同時に希望する人はみんな仕事を続けて自己実現もできる世の中にしていくか、選択ではなくてどちらも包括した生き方がもっと提示されるべきだと思います。

白川
”女性活躍”って、なぜか急に女性への義務が増えた感じがするというか、“無理ゲー”を強要する感じがしますもんね。

谷生
そうそう。労働力が足りない=女性を活躍させよう!みたいな、場当たり的な対応だからそう感じさせるんだと思う。たぶんね、女性は家庭にいればいいんだよって思っている人はまだ沢山いる。でも、それを公に言ってはいけないという意識が共有された、というのが今。その「思っているけど言わない」という状態から先に進んで、マインドセットそのものを変えていく流れになっていかないといけないなと思います。

白川
「言わなければいい」というのも違いますからね。内心が変わっていなければ結局そのまんまなわけですし。

谷生
このあたりの政策でいうと、不妊治療の保険対象年齢が43歳まで引き上げられましたけれど、一方で高所得者の児童手当はなくなるんです。浮いた財源は待機児童の解消に使われるということですが、児童手当をなくしてそれを別の少子化対策に使うって、トータルで考えると、何がしたいの?っていう感じがちょっとしますよね。子どもを作るまでだけが重視されていて、その後は軽視、のようにも見えます。

枝見
特に制作現場は体力勝負のような部分もやっぱりあるから、単純に体力面での時間制限は男女問わず感じると思うんですよね。そこに、女性特有のタイムリミットのことも出てくる状態で、二重にハードな感じがします。

白川
やっぱりドラマが一番忙しい時の働き方って、お子さんがいらっしゃると両立が難しいとか、年齢を重ねるとハードだという事情があるんでしょうか?

枝見
撮影しながら編集もして、OAも始まって、さらに次の話の脚本も作らないといけないってなってくると、正直なところ寝なくても時間が足りない!くらいの感じにはなってきます。

直原
そのハードな期間はどのくらい続くんですか?

枝見
ドラマでは、1クール(3か月)ごとに区切りがあります。連続でクールを担当することはあまりないので、すごく忙しい時もあるけど、ゆるやかな時もあるんですね。逆にバラエティ番組や情報番組で、終わりが見えないまま続けていく方が不安が大きかったりするんじゃないかと思ったりします。

白川
僕は報道番組や情報番組のような毎日放送がある番組に長く携わってきまして、一緒の現場にいた子育て中の方はやっぱりハードそうでした。朝の番組だったら子どもが出かける前に出社しなきゃいけないし、夜の番組だと帰ったらもう子どもが寝ているしってなるので、当然ワンオペでは無理なんですよ。仮にパートナーの方が家庭に比重を振り切っていたとしても、テレビマンと育児の両立は、大変な人が多いだろうなと思います。

谷生
制作現場を抱えるテレビや映画業界って、似たり寄ったりな状況だと思うんですよね。働き方改革の旗振りがあって少しずつ変えなきゃとはなっているけれど、まだ変わりきっていなくて、負担を強いるような労働環境が残ってしまっている。

枝見
まだどこかで「たくさん働いた人の方が評価されるんじゃないか」って感じる部分もあります。少し前までは、本当は来なくてもいいところに「勉強させてください!」って来たりとか、帰っていいよって言っても「最後まで残って片づけます」といった姿勢こそヤル気のあらわれだ、みたいな価値観がありました。

谷生
これって突き詰めると労働生産性の話になると思うんです。日本は海外諸国と比べると生産性が低いことが明らかになっていますよね。特にアメリカの映像プロダクションでは、労働時間を完全に時間で区切るシステムにしたりしていますけど、それでも良い映像コンテンツが沢山生まれるわけですから。

枝見
海外では、撮影が終わってから次の日の撮影を始めるまで何時間あけましょうとか、予算も潤沢にあって長い期間スタッフを拘束できるというのもありますよね。少し違う視点にはなりますが、ドラマで主演女優さんが子育て中の方だった場合、撮影時間を区切ることになったりするんですけど、そういう時って周りも休みやすくなるんです。

白川
しわ寄せが来るんじゃなくて、子育て中の主演の方に合わせてスケジュールを組み立てるんですね。

谷生
映画でも、巨匠と言われるようなご高齢の方が監督をされる場合に同じようなことがありますね。主要なメンバーが率先して時間を区切る状態を作ってくれると、全体がそうなっていくっていういい例ですよね。

白川
これって単純に1日の労働時間が短くなって楽になるということじゃなくて、限られた時間の中でやらなきゃいけないからここは効率化しよう、工夫しようっていう頭を使うことにもなるから、まさに生産性に繋がる部分だと思います。

谷生
長期休暇とかもそうですよね。上司ポジションのプロデューサーや部長が率先して取ってほしい。一番いい上司は「2週間休みます! だからみんなも休んでね」って最初に言ってくれるような人だもの。

白川
「みんなが取ってから自分も取るよ」っていう人は、周りのことを考えているようで逆ですからね(笑) 

谷生
上の人がやってくれてロールモデルを作ってくれると、みんなのマインドセットも変わっていきますから。

白川
前回の対談ではLGBTQという切り口で、当事者という観点からロールモデルがいないという話をしましたけれど、女性の話の時にも同じようにロールモデルがいないということがどうしても出てきますよね。

枝見
ドラマだと女性のプロデューサーは多い方だとは思うんですけど、子育てをしている方は少なくて、私の1年半くらい前に出産された先輩の存在がすごく大きかったです。お互い不安で心細い思いを持っていたところに、ちょっと話ができる仲間ができた!っていう感じで心強かったですね。

谷生
そういう時、例えば部長とか局長クラスで支えてくれる理解者がいたら本当はいいのにね。

枝見
そうですね、少し話を聞いていただけるだけで気持ちが楽になったりするので、自分からも理解を求めて動かなければなと思うのですが、迷惑だと思われそうで心配で、なかなか難しいです。ちょっとゾッとしたのが、上の世代で子育てをしながらキャリアを築いていらっしゃる女性の方に相談したりすると、その世代の方たちってやっぱり男性社会の中で戦ってきているから「子どもを理由に休まない」って言うんです。子どもが熱を出した時も「その時間は外で打ち合わせがあるから直帰します」みたいな言い方をしていたんですって。私もそうしなきゃいけないんだなってその時は思ったんですけど、でも本当はそれって間違ってますよね。

白川
恥ずかしい話だけど、僕の周りで男性が「子どもが熱出したので帰ります」って言っている例をほとんど聞いたことがなくて、そうするとその配偶者の方がそれを担っていたり、二人とも働いていても結局お母さんの方が子どもを迎えに行ったりしているっていうことですよね。

谷生
専業主婦の方がそれを自ら選択するというのはもちろん尊重されるべきことだけど、もしかしたらその「選択」の裏には、パートナーの仕事の負荷が大きくて自分が育児に専念せざるを得ない、みたいなことが隠れているかもしれないですよね。

直原
実は私のいるHuluだと、子どもが熱を出してお迎えに行きますとか、保育園のお迎えが終わってから作業しますという話を男性からよく聞きます。元々アメリカの会社なので少し空気が違うのかもしれないですが、Huluの中では結構当たり前に起こっていることだったりするので、日テレグループ全体にもこの意識が広がっていったらいいなと思います。


白川
出産する時に女性はどうしても一定期間仕事から離れることになりますが、産休中に枝見さんが不安だったこととか、逆に言われて嬉しかったことってありますか?

枝見
産休の前後はもう不安だらけで、言われることが全部マイナスに聞こえてしまうような時期がありました。誰に何を言われても「線引かれてるな」って思っちゃったりとか、「この人のキャリアはもう終わった」って思われてるんじゃないかなとか…… 出産後は体力的にも精神的にも元の生活に戻るのが難しかったり、そんな自分に対してもショックな気持ちがありました。

谷生
これって本当にリアルな声だよね。

枝見
その中でも当時の直属の上司が、よく電話をしてきてくれて、出産前と変わらずに仕事を振ってくるのは嬉しかったですね。

白川
子育て中だからと遠慮されて連絡が来なくなるよりも、変わらずに戦力として接してくれたのが枝見さんにとっては良かったんですね。

枝見
でも一方で「子どもが泣いてて大変なのに仕事振らないでよ!」みたいなすごい矛盾したことを感じることもあって(笑) そして、その時育児と仕事の両立に関して書いてある本を読んでいたら、「自分よりも父親に子どもがなつくことを許せるか」みたいなことが書いてあって。うわーしんどい、これは悩むなぁって思ったんです。

去年仕事がすごく忙しかったタイミングで、自分の子どもが初めて言葉を発したんですけど、初めての言葉が「パパ」だったんですよ。その後しばらく私のことも「パパ」って呼んでいたんです。それが本当に苦しくて、産休前と比べたら仕事も中途半端に感じるし、帰ったら子どもにパパって呼ばれるし、もうなんなんだろう!?って。もちろん、その時にパートナーが育児をやってくれて助かっていたんですが、自分の中にそういう矛盾が生まれて辛かった時期がありました。

でもこれってきっと、これまで男性が感じていたことでもあったんだろうなと思いました。自分の子どもが母親にばかりなつくシーンを、きっとこれまでの男性は沢山見てきたのだと思うし、男性女性というよりかは、仕事と人生の両立についてもっと周囲の理解や社会のサポート制度が必要だなと思います。

谷生
枝見さんのお話を聞いていて、育児が対等にできるからこそ生まれたストレスという部分でもあると思うんですけど、そういう状態がスタンダードになりつつあると思うし、制度的な変化がついていくかどうかはやっぱり大事ですよね。「国際女性デー」というのは、世界各国の社会のあり方をもっと変化させよう、そういった変化を早めなくてはいけないということで、国連が旗を振っているんだと思いますから。

白川
僕たちも、価値観の変化に我々のコンテンツをちゃんと対応させていくという意識を持つべきですよね。例えばニュース番組の中で出てくるイラストでも、買い物をしている人が女性で描かれていたり、コロナの話の時にお医者さんは男性で看護師さんが女性で描かれていたりというのがあると思います。僕のいる報道局では、そういったイラストもなるべくジェンダーニュートラルな表現に変えていこうという呼びかけを行っています。小さなことかもしれないけれども、そういう価値観のアップデートが大切ですよね。

直原
最近CMもそうなりつつありますよね。在宅ワーク風で、男性が料理して女性が仕事して、というシチュエーションとか。

谷生
コンテンツを制作する側がジェンダーバイアスフリーなものを提供していくと、最初はみんな「そういう時代だからだな」って思いつつも、それがずっと続いていくと当たり前になってくるんですよね。映画を作る身としても、そういうメッセージを含めたエンターテイメントが実は受け入れられるもので、マーケットニーズがあるような気がしています。

白川
SDGsの考え方が広まっていますけれども、5番の「ジェンダー平等を実現しよう」という目標は、男性女性がフラットな目線になっているんですよね。男性も自分たちが変わるべき対象であり、女性ももちろん主語であるということが双方にマインドセットとして刷り込まれる部分があって、そういう入り口に今ようやく立っているのかなって思います。

谷生
LGBTQもそうだけど、概念を言語化して、それが広く一般に示されて繰り返し発信されることってとても大事ですよね。そうやって多くの人の意識にしみ込んでいくから。

枝見
最近の20代の方たちって、そこの意識がとてもフラットだなと感じるし、希望が持てるなと思います。

白川
若い方と接していて、はっとしたことってありますか?

枝見
私、靴のサイズが大きくて26センチなんです。スニーカーを買いに行って試着した時に、若い男性の店員さんに「ちょっとごついですかね?」って聞いたんですね。そうしたら彼が「そこって、誰が見ますかね?」って言ってくれて。自分がやりたいことを、やりたいようにやればいいじゃん!っていう価値観を自然に言語化してもらった気がして、すごく嬉しかったです。

谷生
ファッションの話でいうと、ファッション業界ってまさにSDGsやLGBTQみたいな、今の時代の変化を最先端プロダクトとして還元していく産業だと思いますけれど、いわゆるハイブランドの女性靴の売り場って、最近は半分くらいがスニーカーになりましたよね。痛くてもヒールを履いて頑張らなきゃいけないというかつて当たり前だった意識がハイブランドの業界でも変わってきていて、若い方の行動様式にもすごく影響している気がします。

白川
カルチャーでも先端を行く若い人たちの感覚にちゃんと耳を傾けて、むしろ教えてくださいっていう姿勢でいると、きっと学べることは多いですよね。


直原
女性の体の話では、最近メディアで「生理」について取り上げられる機会が増えたと思います。

白川
そうですね。この1年くらい、「生理の貧困」という言葉をニュースで見た方も多かったんじゃないかと思います。実は以前担当していた「newe zero」のカルチャーのコーナーで、生理をテーマにした企画を提案したことがあったんです。ただその時は、むしろ女性ディレクター陣からの反発が強かったんですよ。これをテレビでやっていいの?これはちょっと恥ずかしい、みたいなリアクションだったんです。でも、女性の体のことをオープンに語るというのは恥ずかしいことではないし、大切なことなんだと少しずつ伝わって、彼女たちが自発的に企画を出してくれるようになりました。

谷生
ニュース番組で取り上げていくことって重要ですよね。男性女性に限らず、そのことについてオープンに語ってもいいんだというメッセージになるし、メディアの重要な役割だと思う。

枝見
生理用品って以前は特に、持っていることがバレてはいけないみたいな雰囲気がありましたよね。かわいいポーチに入れるとか、音がしないテープとか、女性同士でも隠すような感じがありました。

白川
生理のことって、まさに女性たち自身が「暗黙の了解」のように扱ってきた面があると思います。僕は18年間実家で暮らしていましたけど、家族の中でも生理について話されていた記憶がないです。

枝見
なかなか話されることはないですよね。初めて生理が来た時も、お赤飯は炊かれるけど明言はされなくて、母と娘だけの秘事みたいな感じで(笑)

白川
最近は、体調不良の時の連絡で「実は今日生理なんです」と言ってくれる部下の女性が時々います。もちろん、言いたくない人は言わなくていいのは大前提ですが、「この人は言っても大丈夫」と思われているならありがたいし、言っても大丈夫な職場という雰囲気を普段から作っていきたいですよね。

こういう人々の意識の変化を通じて、体の構造が違うからこそ女性の体に起こることが言語化・可視化されてきていなかったんだなということを改めて感じます。生理や更年期などがオープンに語られて来なかったからこそ、その時に何が起こるか女性たち自身も知らないような状態になっているんじゃないかなと。オープンに語ることによって女性たち自身が準備できたり、怖くなくなったり、男性側も理解して協力しやすくなるということを少しでも伝えられたらと思います。

直原
生理に関連してなんですが、Huluでは有給以外に「Sick leave(傷病休暇)」という休暇があるんです。病気や体調不良の時に使っていい休暇を最大20日間もらっていて、生理も含めて使いやすい制度だなと思います。

白川
素晴らしい制度ですね! ちょうど先月番組でも「休みやすさ」をテーマに取り上げたんですが、有休消化率100%に近い会社にお話を伺ったら、やはりその会社でも体調不良時は有給が追加される制度を設けていました。生理にフォーカスするとどうしても女性特有の話とされがちですが、そこをきっかけに全員が休みやすい状況に変化させれば、男性女性関わらず全員にとっての自分ごとになりますよね。


直原
最後に、私たちコンテンツ業界に必要な意識のアップデートはどんなものだと思いますか?

枝見
コミュニケーションってやっぱりすごく大事だなと思います。ハラスメントの問題に意識的になったことは良いことですが、あまりに過敏になって、どこまで他人に踏み込んでいいのか悩み、結局スルーしてやり過ごしてしまうことも多いように思います。男女問わず、コミュニケーションをとることを恐れず、無理をしなくていいよとか、ありのままでいいよっていうことをもっとオープンに認め合っていけると、女性にとってもより働きやすい環境が作れていくんじゃないかなと思っています。

直原
先ほど若い世代の意識のアップデートが進んでいるという話が出ましたけれども、管理職や政治家にもっと女性を増やそうというのと同じように、下の世代からもリーダーを登用してもいいんじゃないかというのは日頃から思っています。年齢多様性を持った組織は、結果的に女性にとってもプラスの環境になると思うので、そうなっていって欲しいです。

白川
ドラマなどの作品単位では、枝見さんのように若い方が抜擢されて、先輩がサポートするようなことも起きやすかったりしますよね。それが周りへのロールモデルになったり、若い世代の意識が周りにも浸透するきっかけになったりするのかなと思います。

谷生
可視化されることの大事さと、当たり前になっていくためにはマインドセットを変えなきゃいけないということを改めて感じました。国際女性デーをきっかけに、様々なメディアで女性の問題が発信されていくということはすごく意味があると思います。

自分に引き付けて話をすると、私という存在自体がありのままで、かつその強みを活かした形でコンテンツ制作を続けていって成功させることが、ポジティブなソーシャルチェンジにつながっていくはずだ!という気持ちを改めて強く持つことができました。

白川
僕は報道の仕事をメインにしていますが、ニュースの中で伝えているジェンダー平等のメッセージはすごく真っ当だと思うんですよね。一方で、それを作っている作り手の環境を見ると「おいおい、どの口が言うとんねん!」みたいな人や状況というのがやっぱり時々あって(笑) こういう場で改めて思ったのは、やっぱり外に向けて言うだけではなくて、その中にいる自分たちの感覚がちゃんと変わるところも含めて、僕たちの世代にも責任があると思いました。外に向けて発信することを、内側に対しても同じボリュームで伝えることを頑張っていきたいと思います。


Hulu特集「自らの信念に従い生きる女性たち」
多くの困難に直面しながら、自らの信念を持って行動し、成功や幸せを掴み取ろうとする女性が主人公の作品をご紹介します。
https://www.hulu.jp/features/womenspower_sp